仕事を知るPROJECT INTRODUCTION
プロジェクト紹介
名勝成就院庭園 歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業
プロジェクトの担当部署 | 開発事業部 |
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プロジェクトの目的 | 2018年(平成30年)9月4日に近畿地方を襲来した台風21号により、清水寺にある名勝成就院庭園の背景林が壊滅的な被害を受けました。庭園の価値を高めていた背景の森林植生を回復することを目的として本プロジェクトが実施されました。 |
プロジェクトに至る当社と清水寺の由来
内外エンジニアリングと清水寺との縁は、1989年(平成元年)にさかのぼり、竹中工務店からの紹介で境内地の確定測量を発注いただいたのが最初でした。その少し後の1999年(平成11年)、音羽の瀧の裏山が崩壊した際に復旧対策の相談を受けたことから、永い付き合いが始まりました。
2013年(平成25年)には、豪雨で再び音羽の瀧の裏山が崩壊したため、その復旧対策設計と施工監理を依頼されました。



その後、奥の院の修復に伴う環境保全整備や本堂周辺の石垣修復整備などの設計と施工監理を担当しました。
2020年(令和2年)からは、名勝成就院庭園 歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業にたずさわらせていただきました。
プロジェクトの概要
本プロジェクトでは「原状回復」ではなく、「よりよい再生」を目指すことに重点を置いて計画を進めました。
台風被害により、背景の森林植生のほとんどの高木が倒木あるいは幹の折損という甚大な被害が発生しました。この背景林を、かつてのアカマツ林やイロハモミジなどの落葉樹主体で比較的疎開した明るい森林に戻すことを目指しました。これにより、成就院庭園が本来持っていた好ましい背景林の景観を得ること、近年よりも防災力の高い植生を再生することを期待しています。
5ヶ年計画(令和2年度~令和6年度)にわたり実施された整備事業では、以下の様々な取り組みが行われました。
- 台風で被災した倒木や危険木の伐採・撤去。
- その後の豪雨で発生した樹木の傾きや表土流出といった二次被害への対応。
- 急峻な斜面の表土流出防止や安定化、実生誘導を目的とした土留め柵(筋工)の設置と拡大。
- 天然更新を促すため、林床の外来種・支障草本類の除去や、シイの伐採・剪定による林床の照度改善。
- 鹿やイノシシによる食害・掘り起こしを防ぐための獣害対応柵設置や礫詰め処理。
- 指定地の上部に位置する国有林地との連携による一体的な整備推進。
- 境内地で採取したアカマツ種子の播種やイロハモミジの植栽。

これらの整備により、台風被害からの復旧作業が進み、今後の森林再生に向けた下地が整備されました。しかし、「整備事業完了」は「森林再生の完了」ではなく、表土の安定維持や実生植物の植生回復など、今後の5年、10年単位での継続的な管理と取り組みが不可欠です。
この継続的な努力こそが、「森林再生=文化財再生」であり、名勝庭園の背景林という貴重な文化財の価値を未来へ継承していくための重要なステップと考えています。

